演歌に使われる意外な楽器と、僕の使っているその楽器のソフトインスツルメントの紹介だが、第3回は「コルネットバイオリン」だ。
日本で、特に演歌歌謡曲業界では「コルネットバイオリン」と呼ばれているが、海外では「
Stroh Violin(ストローバイオリン)」と呼ばれている。
このストローは、ジュースを飲む方でなく、人名で開発者の名前だそうだ。
表現力が素晴らしいバイオリンであるが、金管楽器やピアノなどと比べて、若干音が小さいという欠点がある。
クラッシックのコンサートのように、響の良いホールなどでの演奏で、お行儀の良いお客さんが静かに聴いている分にはまったく問題はない。
だが、酒場のような騒がしい場所や、金管楽器やバンジョーやアコーディオンなどとのアンサンブルでは、周りの音圧に負けてしまう。
現代においては、PA(音響システム)が良いので、マイクで録ればロックギターにも対抗できるのであるが。
昔は生音で対抗するしかなく、そんな経緯で生まれたのが「
ストローバイオリン」。
見た目が、胴をとって竿だけになったバイオリンにラッパをつけた、非常に個性的な楽器である。
パッと見で、トランペットに良く似た
コルネットという楽器をイメージすることから「コルネットバイオリン」とも呼ばれているそうだ。
戦前では、蓄音機を作っている会社が蓄音機のラッパ部分を流用して作っていたそうだが、現代の日本での製作者はなく、中古か海外で購入するしか手立てはないとのことだ。
なぜ演歌に使われるかというと、戦前や大正時代当時の録音機材の事情でよく使われていて、そのイメージからノスタルジックな雰囲気を演出できるからだ。
また、哀愁と悲しさを感じる音色だけではなく「うらぶれた感」を表現できる唯一無二な楽器でもある。
ただ、楽器の重量がそこそこあって、演奏者はアゴで挟むだけでは支えきれないので、ポジション移動の難易度が高いことが欠点である。
アレンジャーとして、そこを考慮にいれないで演奏困難なフレーズを作ると、レコーディング業界用語の「お笑い」という、その現場のミュージシャンやエンジニアさん達ののクスクス笑いがおきて、アレンジャーとしての評価が急落してしまうので要注意である。
代表曲は「
小林旭/昔の名前で出ています」で、のイントロでその哀愁のある音色を聴くことができる。
さて、コルネットバイオリンはもちろん手練れのスタジオプレイヤーに演奏してもらうのが一番であるが、予算の関係で打ち込む場合、僕のお薦めというより、これしか無いのだが、
「
Impact Sound Works/The Stroh Violin」。
なんと太っ腹なことに販売価格は、$0!
ミュージシャン用語で「ダータ」!
音色は申し分ない。
しかし、奏法やアーティキュレーションの選択があまり無いのが欠点といえば欠点だが、そんな文句を言ってはバチがあたるというもんだ。
9/20に発売されたばかりの、
北川かつみの新譜「新・四谷3丁目」の編曲をさせていただき、そのイントロや間奏でコルネットバイオリンを使ってみた。
このセッションは手練れのスタジオプレイヤーに演奏してもらい、素晴らしい「うらぶれた感」を表現していただいて、恐縮であるがアレンジャーとして上々の評価をいただけた。
幸いそのPVがYouTubeで視聴できるので、聴いていただけたら幸いだ。
https://youtu.be/xD-C86DXuaY
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