コンピュータやIT技術が苦手の人はよく「自分はアナログ人間なので、デジタルは苦手です」という言い方をする。
しかし、レコーディングの現場では、コンピュータの中で数値化された信号がデジタルだし、マイクやアンプなどで空気振動を電圧変動に変換した信号がアナログだ。
アナログ信号は、トランジスタなどの半導体や真空管などで小さな信号を大きい信号に増幅処理が行われる。
その時、必ずノイズがアナログ信号に混ざってしまう。(エンジニアさんはノイズが乗るという)
そして、そのアナログ信号はテープレコーダーに記録され、そこでテープヒスノイズという新たなノイズが加わる。
昔はそのノイズを聴感上小さくなるように録音技術が工夫され、ノイズの少ないクリアな録音が良い録音とされてきた。
翻って現在の録音はどうであろうか。
ノイズのないクリアな音の処理が行われるコンピュータ内部のデジタルデータに、わざわざノイズを乗せることがトレンドだ。
そのノイズは、名機と呼ばれているアナログのマイクアンプやイコライザーやコンプレッサーやテープレコーダーのノイズをシミュレートしたプラグインで発生させる。
それも、内部のひとつひとつの部品のノイズを解析して、かなり正確にシミュレートしている。
乗せるノイズもなんでも良いわけではなく、良いアナログ機材のノイズは良いノイズということのようだ。
たしかに、不思議なことに良いノイズを加えると、温かみのある、言うなれば人間的な音になる。
今ここで耳を澄ますと、風の音、遠くの車や電車の音、空調音、鳥や虫の鳴き声、など環境音が聞こえるはずだ。
普段は意識をしない環境音であるが、それがある環境が自然であると脳が認識しているのであろう。
そんな環境音に囲まれている中に、ある音にノイズが含まれないと脳が認識すると、不自然なものとして、その音を感覚的に拒否したくなるのかもしれない。
そう考えて行くと、もしかしたら悪いノイズは、ノイズの無いことなのかもしれない。
やっぱり、純粋無垢であることより、ノイズで少し汚れた方が人間的なのだろう。
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