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TV時代劇「大江戸捜査網」の劇伴

大江戸捜査網」とは、1970年から1984年まで東京12チャンネル(現 テレ東)で放送された、時代劇である。

時代劇の定番である勧善懲悪をテーマにしながらも、当時人気のあったアメリカのTVドラマである「スパイ大作戦」と「アンタッチャブル」のエッセンスを取り入れた、当時としては斬新なアクション路線の時代劇だった。

現在はBSジャパンにおいて平日のAM9:00より再放送されている。

脚本や演出やキャストとかについては他の識者のサイトに詳しいが、僕がここで書きたいのはは、劇伴とその作者である故玉木宏樹氏についてである。



劇伴とは、映画やTV、演劇など劇中で流れる音楽のことである。

現在は民放連とNHKがJASRAC(日本著作権協会)と楽曲使用の包括契約を結んでいるので、JASRACの管理楽曲であるならば、好きなだけ定額で使用出来るようになっている。

なので、近年はTV番組の制作費が厳しいので「音効」さんが演出家や監督のオーダーに合わせて、JASRACの管理楽曲を組み合わせたり編集したりして劇伴を作ることが多い。

しかし大江戸捜査網の放映されていた1970年代は、劇伴に予算がかけられ、シンセサイザーも未発達であり、勿論デジタル編集も出来ない時代であったので、すべて人力で劇伴が作られていた。



大江戸捜査網の劇伴と言えば、オープニングやクライマックスの立回りで流れるメインテーマが有名である。

今聞いても、4拍子から3拍子5拍子とくるくる変わる拍子や、短三度上に転調したり、ホルンが主旋律を演奏したりで、時代劇としてはかなり斬新な音楽である。

しかし、僕が注目するのは、普通にサスペンスやほのぼのとしたシーンや人情的シーンに使われる劇伴だ。

そんなシーンなのに、邦楽やジャズやロックや現代音楽、クラシックなど様々音楽のスタイルを取り入れ融合させながらも、ドラマの世界観にフィットさせる発想力や感性がすばらしい。

そして僕が特に参考にしたいのが、淡々としたシーンでも役者の心情を説明しすぎず、しかし繰り返しでなく少しずつ変化して行き、役者も脚本も生かす控えめながらも華のある音楽だ。

やはり、劇伴であってもソングライティングや編曲であっても、自分も回りも生かす「華」のあることが僕の音楽を作る上での最重要なテーマだ。

今も、時々は朝の仕事に入る前にはBSジャパンの再放送を見て、モチベーションを上げたりしている。



その音楽を作った玉木宏樹氏は惜しいことに2012年に鬼籍に入られた。

若い頃は山本直純氏のアシスタントをしながら数々の劇伴の現場を経験し、「男はつらいよ」のメイン曲の編曲などもしたそうである。

やはり天才肌の方らしく、その類い稀な才能を、劇伴を多作する方向でなく、クラシックや現代音楽や研究の方向に生かされたようだ。

特に純正調の研究と啓蒙活動はよく知られている。

現在において、「大江戸捜査網」以外に玉木宏樹氏の劇伴をあまり聞く機会がないことは、本当に残念なことである。

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